
何人かの社長と投資の話をしていると、
「インベスコ 世界厳選株式オープン〈世界のベスト〉は、毎月分配金が入って年間20%くらいになるから儲かってるよ😊」
という話を聞くことが、少なくありません。
正直、驚きます。
ただ、驚くのは「年率20%」という数字ではありません。
「今でも銀行や証券会社は『毎月分配=利益』という印象でセールスして、それを信じて購入している人が少なくないんだ。」
ということです。
僕が証券会社や資産運用会社で働いていた頃は、毎月分配型投資信託が大ブームでした。
グローバル・ソブリン・オープン(グロソブ)、財産3分法ファンド、野村米国ハイ・イールド債券投信 ブラジルレアルコース、新光US-REITオープン(ゼウス)など、その時代ごとに人気商品があり、多くの人が「毎月お金が入るから安心」という理由で購入していました。
その後、金融庁が顧客本位の業務運営を求めるようになり、「分配金=利益」と誤解させるような販売は避けるべきという考え方も、金融業界にはかなり浸透したと認識していました。
だからこそ、今でも同じような話を耳にするたびに、「まだこの認識は根強く残っているんだな」と感じます。
なお、この記事は『世界のベスト』という商品自体を否定するものではありません。
お伝えしたいのは、毎月分配金の仕組みと、投資信託を選ぶときに本当に見るべきポイントです。
毎月分配金は”利益”ではない
まず知っていただきたいのは、分配金は利益とは別にもらえるボーナスではないということです。
投資信託の分配金は、ファンドの資産から支払われます。
そのため、分配金が支払われると、その分だけ基準価額は下がります。
例えば、基準価額が1万円の投資信託から200円の分配金が支払われた場合、ほかに値動きがなければ、分配後の基準価額は9,800円になります。
つまり、
毎月分配金が入る=その分だけ資産が増えている
というわけではありません。
見るべきなのは、
分配金を含めて、自分の資産全体がどれだけ増えたか
です。

『世界のベスト』が悪い商品と言いたいわけではない
ここで誤解してほしくないのですが、僕は『世界のベスト』を否定したいわけではありません。
実際、ここ最近は世界株式市場が好調だったこともあり、運用成績そのものは良好です。
分配金を支払っても基準価額が比較的維持されているのは、
運用益が分配金を上回っているからです。
つまり、
- 分配金を受け取っている
- 基準価額も大きく下がっていない
- 結果として利益も出ている
という状態は十分にあり得ます。
利益が出ていること自体は、とても良いことです。
ただし、その利益は「年間20%の分配金が上乗せされたから」ではなく、投資先の株式が値上がりしたことで生まれたものです。
ここは分けて考える必要があります。
気になるのは「コスト」
僕が『世界のベスト』を見るときに気になるのは、分配金よりもコストです。
『世界のベスト』は、
- 購入時手数料:最大3.3%
- 信託報酬:年1.903%
となっています。
一方、同じMSCIワールドをベンチマークとするインデックスファンドに、
eMAXIS Slim 先進国株式(含む日本)<オール先進国>
があります。
こちらは、
- 購入時手数料:なし
- 信託報酬:年0.09889%
です。
さらに、過去1年間では、『世界のベスト』よりもeMAXIS Slim 先進国株式(含む日本)<オール先進国>の方が高いリターンとなっていました。
| インベスコ世界厳選株式オープン <為替ヘッジなし>(毎月決算型)(世界のベスト) | eMAXIS Slim 先進国株式 (含む日本) <オール先進国> | |
|---|---|---|
| ベンチマーク | MSCIワールド | MSCIワールド |
| 運用方法 | アクティブ運用 | インデックス運用 |
| 購入時手数料 | 最大3.3% | なし |
| 信託報酬 | 年1.903% | 年0.09889% |
| 過去1年リターン | 約23% (課税前分配金を再投資した場合) | 約36% |
もちろん、1年間の成績だけで商品の優劣を決めることはできません。
また、『世界のベスト』は投資先を選別するアクティブファンドであり、指数への連動を目指すeMAXIS Slimとは運用方法が異なります。
それでも、毎年約1.8%のコスト差は、長期投資では決して小さくありません。
わずか1〜2%の違いに見えても、長期では複利の影響で資産額に10年で約15〜17%、20年では約30%程度の差になることもあります。
もちろん、アクティブファンドがそのコストを上回る運用成果を出せば、その差を埋めることも可能です。
だから僕は、
「高い手数料を払ってでも、選ぶ理由があるのか。」
という視点で商品を見るようにしています。
毎月お金を受け取りたいなら、別の方法もある
毎月分配型投信が選ばれる理由の一つに、
「毎月、決まったお金を受け取りたい」
というニーズがあります。
特に退職後の生活費など、定期的に現金を受け取りたい人にとって、毎月分配は分かりやすい仕組みです。
ただ、毎月お金を受け取る方法は、毎月分配型投信だけではありません。
現在はネット証券で、投資信託を自動的に売却する定期売却サービスがあります。
例えば、
- 毎月5万円など、決まった金額を売却する「定額取り崩し」
- 毎月0.5%など、保有資産の一定割合を売却する「定率取り崩し」
といった方法です。
毎月分配型投信も、ネット証券の定期売却も、保有資産の一部を現金として受け取るという点では同じです。
違うのは、
毎月分配型投信は運用会社が分配額を決めるのに対し、
定期売却は自分で受取額や受取割合を決められることです。
つまり、
低コストのインデックスファンドで運用しながら、必要な金額だけを取り崩す
という選択肢もあります。
「毎月お金が欲しい=毎月分配型投信」と決めつけるのではなく、コストや受取方法も比較したうえで、自分に合った方法を選ぶことが大切です。
まとめ|分配金ではなく、資産全体で判断する
『世界のベスト』は、決して悪い商品ではありません。
実際に利益が出ている投資家も多いでしょうし、アクティブファンドとして高いリターンを目指すという考え方にも価値があります。
ただ、投資信託を選ぶときは、
- 分配金を含めた資産全体が増えているか
- 長期的なコストはどうか
- 自分の目的に合った商品か
- 高い手数料を払ってでも、選ぶ理由があるのか
という視点で判断することが大切です。
毎月お金が振り込まれると、「利益が出ている」と感じやすいものです。
でも、本当に見るべきなのは、
「毎月いくら受け取ったか」ではなく、「最終的に資産がいくらになったか」。
僕は、それが長期投資で最も大切な視点だと思っています。
だからこそ、『世界のベスト』に限らず、どんな金融商品でも、
「本当に、自分にとってベストな選択なのか。」
商品名や営業トークだけで判断するのではなく、一度立ち止まって考えてみてほしいと思います。
本日はここまで、それではチャオチャオ!

